漫画書評 ①
結局一年越しの更新になりました。
最近読んだ漫画の書評(というより感想)をだらりと書いていきたいと思います。
読む漫画のジャンルはその時々の傾向によってかなり左右します。というわけである程度偏った内容になるかもしれませんが、悪しからず。
Ⅰ 上野さんは不器用
- 作者: tugeneko
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 2016/09/29
- メディア: コミック
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僕には知る由もありませんが、ただひとつだけ思うのは、いつの日か「この人のおしっこなら飲みたい」、あるいは「この人の靴下なら嗅げる」という誰かが見つかったときー、それは愛に一歩近づいた証拠ではないだろうかということです。心から慕う相手のものなら、その排泄物までも愛せるという理論です。実にオーセンティックで的を得ていると思います。
ジュブナイルにおいて好きな子のリコーダー、あるいは体操着に対して興奮する描写をよく見かけます(?)が、あれはもしかすると「好き」という感情がそのまま行為に直結しやすい年代故のものなのかもしれません。
「上野さんは不器用」は、正に恋に不器用な科学部部長の上野さんが、鈍感にも程がある同じ部活の後輩男子にあれやこれやの手段を講じて自分の気持ちを理解してもらおうと奮戦する姿を描いた、純恋愛文学ともいえる作品です。
ラブコメというと状況に自分を投影したりということもありそうですがこの作品に関してはそういう気分にはならず暖かい目で見ていてあげたい気持ちになりました。
そういうスタンスでラブコメが読みたいという方にはベストな作品だと思います。
あと絵がかわいい。
Ⅱ トモちゃんは女の子!
- 作者: 柳田史太
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/10/08
- メディア: コミック
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高校時代、ある友人にいかに「幼なじみ」という存在が尊いかということについて話したことがありましたが、「幼なじみはいるけど実際そんな大したものではない」と一蹴されました。なるほど、世界から争いがなくならない原因はこの辺りにあるのでしょう。
ないものねだりとは正しくこういうことをいうのであろうと理屈では分かっていても求めてしまうのが人情であろうと思います。そもそも持っていないから欲しがるわけであって、そこが既に持っている人には理解されない点なのかもしれません。
「トモちゃんは女の子!」は、僕のような「幼なじみ」フリークの或いは福音となる可能性を秘めた作品であろうと思います。男勝りでありつつ内心は乙女なトモちゃんはもちろん、鈍感すぎではあるもののトモちゃんのことを大事に思っているであろう男主人公も好印象です。
ですが、個人的にはやはりみすずちゃんが一押しです。幼なじみ属性を兼ね備えたクールビューティー、例えるならば鬼に金棒、獅子に鰭といったところでしょう。
- 作者: 施川ユウキ
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2013/04/19
- メディア: コミック
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誰しも一度はいわゆる読書家キャラというものに憧れたことがあるかもしれません。本当に読書家の人もいるかもしれませんが、あまりに「本を読んでいる」風を衒うと煙たがられるのも事実でしょう。
しかしながらいつの時代でも、放課後の図書室で少し開いた窓から吹き込む風に吹かれて、ふと顔をあげて髪を直す黒髪女子の手に携えられた本はある種のイコンであろうと思います。
飛躍しましたが、この漫画の主人公はいわゆる読書家に憧れる少しイタい女の子です。だからこそ共感できる部分も多く、読んでいてむず痒くなることもしばしばあります。
個人的には漫画本編の間に閑話休題的に挟まれる筆者のコラムが好きです。
Ⅳ明日ちゃんのセーラー服
- 作者: 博
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2017/04/19
- メディア: コミック
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「中学生美少女の成長を愛でる、そんな恍惚」という帯の謳い文句よろしく、この漫画から得られる感情はまさに尊さ−恍惚でしょう。
田舎の女子中学生とはかくも美しいものなのでしょうか。僕も田舎出身ですが。
表紙に惹かれてチョイスした漫画ですが、本文の絵も繊細で素晴らしいです。
何よりも、ここに出てくる中学生女子は艶かしい。エロい。
表情から四肢の挙動、服の脱ぎ方から果ては爪を切る動作まで、とにかくエロい。
尊い。
からかい上手の高木さん 1 (ゲッサン少年サンデーコミックススペシャル)
- 作者: 山本崇一朗
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2014/06/12
- メディア: コミック
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なぜ僕が生きているこの世界には高木さんがいないのでしょうか。
僕が高木さんと一緒の中学生活を送っている世界線も、この時空の彼方には存在しているのでしょう。
高木さんが教室にいて、しかも隣の席で、授業中も放課後もムズムズするようなちょっかいをかけてくる‥
もしそんな中学時代を送っていたら、僕の人生はもう少し色鮮やかなものであったに違いありません。
さて、「からかう」という言葉にはマイナスなニュアンスが含まれているということは言うまでもありません。
ところが高木さんにからかわれるということがどんなに羨ましく思えることでしょう。むしろご褒美です。
これはあくまで個人的な感想ですが、この二人がそれぞれの友達とお互いの関係性について追及されたりした時の反応、特に高木さんの反応がイイです。ベタな言い方をすれば脈ありな反応とも言えるでしょうが、とかく読者側の口角が緩んでしまいそうな態度を取る高木さんがイイのです。
さらに、このからかい上手の高木さんの超後日談的番外編、「からかい上手の元高木さん」が配信されています。
現行で継続中の話の後日談を並行して進めるというのはなかなか類を見ませんが、最高です。
何度でも繰り返しますが、こんな人生が送りたかったです。
Ⅵ終電ちゃん
- 作者: 藤本正二
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/03/23
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終電−日中の列車とは違う様相を呈する、このある種異様な環境では様々なドラマが展開されます。
新宿発高尾行きの中央線最終列車と共に現れる「終電ちゃん」、そして彼女を取り巻く乗客たちの人間模様を描いた作品です。
個人的には「終電ちゃん」は、終電の中で疲弊しきった人々が思い描いた偶像−幻影なのではないかと思います。
誰しもが終電に乗っている孤独で疲れ切った自分を支えてくれる存在、その実現を知らず知らず望んでいて、それが実態化した姿こそが「終電ちゃん」に他ならないのではないかと思うわけです。
ある存在が大勢の人々の共通の空想に裏付けられたことによるものだったという話には例えば今敏監督の妄想代理人というアニメ作品がありました。まあこの作品に関してはそんなことはないですが。
「それが嫌なら・・・二度と終電なんか乗るんじゃないよ!」
捉え方によっては、終電に身を窶す人々が心のどこかで誰かが言ってくれるのを待ちわびている言葉なのではないでしょうか。
Ⅶ麻衣の虫ぐらし
- 作者: 雨がっぱ少女群
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2017/10/27
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虫×少女。年齢規制はかかっていません。
精緻なタッチで描かれる、少女たちの日常と虫の話です。
それぞれが事情を抱えつつ、田舎での生活を送る描写、そこで展開される人間模様に心が打たれます。
主人公の麻衣が無職ということで天衣無縫さが増していて、個人的にポイントが高かったです。
虫について、大体のイメージとしてはネガティブなものが多いのではないでしょうか。
作者である雨がっぱ少女群先生がホラーを描くことも鑑みた上での完全な妄想ですが、ここで登場する虫とは平和な生活に陰を落とす様々な状況のメタファー的意味を含んでいるのではないでしょうか。
のどかな風景と交流の中に登場する虫は、ある意味で当然で、しかしクローズアップされるとそのグロテスクさが際立ちます。これは普段の何気ない日常の中に散在する何気ないイベント、特にそれがネガティブなものであるという状況のメタファーではないだろうかということです。
繊細なタッチで描かれるからこそ、物語の切れ味よく、身に沁みます。カタルシスです。
今回は以上7作品です。
もし次回があれば、最近読んだということに制限せず書評を書こうかと思います。